選ばれる理由

時を重ねるほど、わが家のことが好きになる。
谷口工務店は、そんな家づくりを行っています。

【対談】弊社代表・谷口弘和×弊社設計部長・松本洋太 「家道(やどう)」を、家づくりの現場へ

~日常の豊かさに気づき、喜びをつなぐ家づくり


谷口工務店が掲げる「家道(やどう)」の出発点にあるのは、創業以来大切にしてきた「みんなが喜ぶ家づくり」という考え方です。

家をつくることが目的ではなく、その先にある暮らしを豊かにすること。そしてお客様だけでなく、設計する人もつくる人も、家づくりを通じて成長し、日常のなかにある喜びに気づけるようになること。代表の谷口弘和が、長年の家づくりと茶道や禅からの学びを重ね、一連の考えを「家道」という言葉にまとめました。

その理念を実際の仕事にどう生かすのか。設計部長の松本洋太が谷口に問いかけながら、「家道」をひも解きます。

「みんなが喜ぶ家づくり」の先に、「家道」という道が見えてきた。


松本洋太(以下、松本)
「家道」という言葉を社長が最初に話されたのは2022年1月でした。「家道」はどのようにして生まれたのでしょうか?
 
谷口弘和(以下、谷口)
一番の出発点は、創業時からずっと掲げてきた「みんなが喜ぶ家づくり」という基本理念です。お客様が喜ぶ、職人も喜ぶ、会社も喜ぶ。関わる人ができるだけみんな喜べる仕事をしたい。それを追求するうち、「喜びとは何か?」「幸せとは何か?」というところまで行き着きました。そしてあるとき気づいたんです。私たちが本当につくりたいのは家そのものではなく、その家で暮らす人の幸せなんだ、と。家は幸せに生きるための器です。どれだけ立派な家でも、暮らす人が幸せを感じられなければ、めざす家づくりにはなりません。

考えを深めるきっかけになったのが茶道でした。茶道には「一座建立(いちざこんりゅう)」という考え方があります。亭主が一方的に客をもてなすのではなく、その場にいる人が心を合わせて「良い時間にしよう」とする。そうして初めて満ち足りた時間が生まれる。家づくりも同じではないかと思ったんです。

私たちだけが良い家をつくろうとしても足りない。お客様も、設計士も大工も、互いを理解しようとする。みんなで一つの家をつくっていく。そこから、家づくりにも一つの「道」があっていいと考えるようになりました。

 松本
「みんなが喜ぶ」だけだと、「楽しく仕事をしましょう」という意味にも受け取れます。社長が考えているのは、もう少し深いところですよね。
 
谷口
そうですね。茶道の奥には禅の考え方があります。禅では、特別なものを手に入れることだけを幸せとは考えません。目の前にあるもの、普段の暮らし、何気なく過ごす時間。そこに豊かさがあると気づく。その「気づく」ことがとても大切だと思うようになりました。人として成長するほど、日常のなかにある幸せを深く感じ取れるようになる。


売ることより、知ること。まずはお客様の日常を理解する。


松本
家道を実践するなかで、お客様との最初の出会いでは、どんなことを大切にすれば良いと思いますか?
 
谷口
まず、その人を知ることだと思います。「営業」という言葉を使うと、どうしても「どう契約していただくか?」「どう選んでもらうか?」と考えやすい。もちろん仕事をいただくことは大切ですが、順番は逆にしたくありません。まず「この人にとって何が一番良いか」を考える。役立つ情報があれば伝える。せっかくの出会いだから、その時間自体を良いものにする。それが家道の最初の一歩です。
 
松本
僕も以前は「どうやって谷口工務店を選んでもらおうか」と考える部分がありました。でもそれでは、お客様を知る前にこちらの答えを押しつけることになる。最近はまず「どんな人なのだろう」と考えます。普段どんな時間を過ごしているのか、休日は何をしているのか、今の暮らしで何に困っているのか。それを知らなければ、その人に合った家も設計できないと考えるようになりました。
 
谷口
家は幸せになるための器ですから、先に器だけを決めても仕方がありません。まず、そこにどんな暮らしを入れたいのかを考える。そのためにお客様と話す時間が大切になります。
 
松本
僕たちは木のことも断熱のこともたくさん話したくなります。でもまずは一度こちらの話を抑えて、相手の話を聞く。モデルハウスでも「この設備が良い」と説明するだけでなく、「ここで暮らすとしたらどうだろう」と考えてもらう時間にしたいんです。
 
谷口
それができれば、仮に当社で建てなくても、その方にとって意味のある出会いになります。その結果「この人たちと家をつくりたい」と思っていただければ、一番自然ですよね。


お客様の豊かな日常を想像し、図面に落とし込む。


松本
お客様を知った後、僕たち設計士が具体的な提案をします。そのとき常に家族の「日常を豊かにする」ことを意識しています。
 
谷口
それはまさに家道そのものです。幸せは特別な出来事のなかだけにあるのではありません。朝「おはよう」と言う、一緒にご飯を食べる、窓から季節の変化を見る。とても豊かなことですが、毎日のことだから気づきにくい。家はそういう日常が積み重なる場所です。だから設計でも「何を付ければ豪華になるか?」ではなく、「この家族が普段の暮らしを心地よく感じられるか?」を考えてほしい。
 
松本
お客様と話を重ねるうちに、その家族の生活が少しずつ見えてきます。親がキッチンに立つとき子どもは何を感じるか、家族が集まるのはいつなのか、窓から何が見えると気持ちがいいのか。その日常が頭に描けて、初めて間取りに落としていく。そういう順番にしたいんです。
 
谷口
家は設計士の作品ではないので、その気持ちは大事にしたい。
 
松本
設計部では「奇をてらわない」という話をよくします。要望が増え、設計士も見栄えのするものを提案したくなる。でも本当にそれがその家族の日常を豊かにするのか、一度立ち止まって考えたい。一方で基準は人によって違います。例えば100インチのテレビでも、家族で映画を見ることが何より大切な人なら、余計なものではない。
  
谷口
そうですね。こちらの価値観で「これは必要」「これは不要」と決めるものではありません。
 
松本
結局ここでも「その人を知る」に戻ってきます。何を持っているかではなく、その人が何に喜びを感じるのか。そこまで考えて設計できれば、「日常を豊かにする家」に近づけると思います。
 

図面の先に、人がいる。思いをつなぐ一気通貫の家づくり。


松本
谷口工務店では社員大工の存在も大きいですよね。家道にとって、大工はどんな存在なのでしょうか?
 
谷口
欠かせない存在です。私の父も大工でした。昔の大工はただ家を建てるだけでなく、建てた後もお客様との付き合いが続き、地域で「あの人に頼めば大丈夫」と思ってもらえる、いわゆる「棟梁」でした。ところが産業が効率化するなかで営業・設計・施工が分かれ、大工は図面通りにつくるだけになった。私自身、そういう仕事を経験して寂しさを感じたこともある。だから創業時に大工を自社で育て、もう一度お客様との距離を近づけたいと考えたんです。
 
松本
僕たち設計士から大工に渡したいのは図面だけではありません。たとえば在宅勤務のご主人のために、ダイニングの近くに庭を眺めながら働けるスペースを設計した事例があります。その家では大工に「机をつくって」とだけでなく、「家族の気配を感じながら働ける場所にしたい」という設計の意図まで伝えました。もちろん、その意図を理解してくれる社員大工あってこそだと思います。
 
谷口
そこまで伝われば大工の仕事も変わります。「誰のためにつくっているのか」が見える。人と人が関われば、相手の立場を考える機会が増える。設計士は大工を、大工は設計士やお客様を、お客様はつくり手を思う。そういう関係のなかで人は成長していく。
 
家道は家を建てる技術だけでなく、人が育つ場でもあると思っています。相手を思いやり、自分だけでは気づかなかったことに気づく。それが結果として、もっと良い家づくりにつながります。
 

傷も、色の変化も、暮らした時間に。自然素材とともに、家を育てる。


松本
木の家や自然素材と「家道」はどうつながっていますか?

谷口
私は「自然素材の家」という言葉自体が少し不思議だと思っています。昔の日本の家は、その土地にある木や土でつくるのが当たり前でした。それが今では特別な家になっている。

自然の木には一つひとつ違いがある。木目も節も色も違い、傷もつき、時間が経てば色も変わる。工業製品のように均一にはできません。でも私は、それが悪いことだとは思いません。

松本
工業化や規格化にもメリットはあります。ただ、それが誰のための効率化なのかは考えたい。住む人のためなのか、つくる側が大量につくるためなのか。

谷口
自然の材料を扱うなら、「この木は節があるからここに使おう」と大工が考える。均一にするより一本ずつ違うものと向き合う。そこに技術と面白さがあります。

松本
お客様も、最初は傷だと思っていたものが、何年かすると家族の思い出になるかもしれませんね。

谷口
それも日常の豊かさに気づくことなんです。家族が年齢を重ねるように、家も変わっていく。それを「古くなった」と見るのか、「この家で暮らしてきた時間が残っている」と見るのか。同じものでも見方によって感じ方は変わります。

家の完成は、終点ではない。次の喜びへの始まりでもある。


松本
お引き渡しは僕たちの仕事の一つの区切りですが、お客様にとってはそこから暮らしが始まります。家道で考えると、家の完成はゴールではありませんよね。

谷口
むしろそこからが大切です。私たちは幸せそのものを渡すことはできません。ただ、日常のなかの喜びに気づきやすい家をつくることはできるかもしれない。そしてお客様自身が暮らしながら、その家を育てていく。そういう関係が良いと思っています。

松本
完成してしばらく経って訪問し、「この家、すごく住みやすいです」と言っていただけると、設計士として本当に嬉しいです。

谷口
それがお客様から返ってくる喜びです。お客様に喜んでもらう。それを見た設計士や大工も喜ぶ。すると「次はもっと良い仕事をしたい」と思う。その人が成長し、次のお客様に返していく。家を中心に生まれるこの循環こそが「みんなが喜ぶ家づくり」であり、家道がめざす関係性です。

小さな積み重ねを続けていく。その歩みそのものが家道となる。


松本
僕は設計士として、「家道」という少し難しい考えを、お客様の家づくりにわかりやすく伝える役割があると思っています。「どんな時間を家族で大切にしたいですか?」「この家でどんな日常を送りたいですか?」と聞いていく。そのご家族が大切にしているものに気づくお手伝いをし、その答えを設計に置き換える。それが僕なりの家道の実践です。

谷口
それで良いと思います。私自身も「これが家道の完成形です」と言うつもりはありません。「道」ですから、完成はないんです。時代が変われば暮らしも技術も家のつくり方も変わる。変えるべきものは学びながら変えていく。一方で、お客様と真摯に向き合うこと、相手の喜びを自分の喜びとして受け取ること、日常にある豊かさを大切にすること。そこは変えてはいけません。

お客様、設計士、大工、そして次の世代へ。家を通じて喜びがつながり、人が育ち、その土地の暮らしが少しずつ豊かになっていく。一軒の家から始まる、小さな積み重ね。それを続けていく歩みそのものが家道なんです。



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