能とサスティナブルな暮らし
谷口工務店の日常
皆様、こんにちは。谷口工務店 設計の鷲山です。
秋分が過ぎて、すっかり秋の気配になってきましたね。
秋といえば「食欲の秋」に心惹かれがちな私ですが、今回は「文化の秋」ということで、代表の谷口含めスタッフ4名で能を学びに行かせていただきました。
能について初心者の私たちに、能楽喜多流の塩津圭介さんが能とはどういったものなのか、丁寧に教えてくださりました。
様々なことを教えていただいたのですが、その中で印象深いものを書きたいと思います。
能の謡はかなり昔の言葉でうたわれています。
そのため、聞いただけで意味を理解するのはなかなか難しく、理解できないから敬遠されがちだと塩津さんは仰っていました。私もそう思ってしまっていた一人でした。
しかし、塩津さんから、 能は極めて明確な情報を避けるため、正解がないものも多く、100人が見たときに100通りの見方があってよい、というお話があり、能という芸能に対するハードルがぐっと下がりました。
「分かる」はみんなで同じものを共有することですが、その説明がなければ使い方が広がってくる、使い方を広げた状態にして余白を残しておくというのが『能』の考え方だそうです。
能の謡の中には、 状況の説明で終わっていることがほとんどで、感情まで描かれていないものも多いそうです。
その感情の部分を個々で想像してみるというのも、能の楽しみ方の一つだと教えていただきました。
普段どうしても頭が固くなってしまって「正しい意味を理解しなくちゃ」と思いがちですが、そうではなくて子どものような気持ちで「何をしているところなんだろう」と想像しながら楽しむ方がわくわくしませんか?
たった一つの使い方しかなければ、それは時が経つとともに衰退してくる可能性もあり、永続的なものになり得ないけれども、使う人によって様々な使い方ができるものは永く使っていける、そういったサスティナブルを究極的に突き詰めていった芸能が『能』というものだということでした。
これは家づくりにも通じるところがあると思いました。
年月とともにご家族の暮らし方は変化していくものだと思っているので、私は、「今」の暮らしだけに限定するようなおうちではなく、ゆくゆくの変化も受け入れる、永く住み継いでいただけるようなおうちの設計を心がけています。
能と家づくりがこんなところでつながっているなんて!と思いましたが、昔から大切にされていることは、どこかでつながっている考え方なのだろうということを実感できた体験でした。
長くなってしまったのでここには書ききれないのですが、その他にも、能舞台についてや装束、能面についても様々教えていただき、能とは、知れば知るほど魅力的な芸能でますます興味が湧いてきました。
近いうちに一度、実際の能を鑑賞しに行きたいと思います。
余談ですが・・・
能面をつけての体験もさせていただきました。写真は代表の谷口です。
数歩進むだけやただ立っているだけでも全身の筋肉を使うので結構大変なのです!